ビタミンDは脂溶性のビタミンです。骨粗鬆症やカルシウムに関係するビタミンD。がん予防にも良いと言われている理由について、また、多く含む食品について詳しく紹介しています。
ビタミンDの生理作用
1.歯や骨を強くする
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯の生成に大きく関わっています。人の体の中のカルシウムのおよそ99%は、骨と歯に存在ししているため、カルシウムを摂ると骨が強くなると思われがちですが、実際にはカルシウムとビタミンDを一緒に摂ることでその効果を最大限に発揮させることができるのです。
ビタミンDは肝臓で水酸化され、腎臓で活性型ビタミンDに変わります。その後、血液にのって腸管からのカルシウムの吸収を促し、骨形成を促進します。
2.動脈硬化・がんの発症リスクを低下させる
ビタミンDは、免疫細胞の働きを良くする作用があります。免疫細胞が活性することはすなわち、炎症を抑制してくれることでもあるため、血管の炎症が何度も起こると動脈硬化になると言われていますから、その発症リスクを低下させてくれます。
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ビタミンDの欠乏症
ビタミンDが不足すると、骨に関わる様々な障害があらわれます。 子供では成長時期に背中が曲がる「くる病」、大人では骨軟化症、骨粗鬆症などが起こります。いずれも、ビタミンDの欠乏からカルシウムが不足し、また、骨からカルシウムが溶け出すことが原因で発症します。
骨粗鬆症とは、骨量が減少し骨に「す」が入ったスカスカの状態になること。骨軟化症は、大量の未石灰化の類骨が増加し発症します。
ビタミンDを多く含む食べ物
ビタミンDは、植物由来のプロビタミンD2 と動物由来のプロビタミンD3があります。植物由来のD2ではきくらげやきのこ、乾物に多く含まれ、動物由来のD3では魚や卵に多く含まれています。
このプロビタミンD2とプロビタミンD3は紫外線照射によりビタミンDとして働きます。
食品名 | 目安量 | 含有量(μg) |
白きくらげ | 5個(5g) | 49 |
かじき | 1切れ(80g) | 30 |
白鮭 | 1切れ(80g) | 26 |
うなぎの蒲焼 | 1串(100g) | 19 |
さんま | 1尾(100g) | 19 |
さば | 1切れ(80g) | 9 |
ひらめ(養殖) | 1切れ(80g) | 14.4 |
いわし | 1尾(40g) | 4 |
ビタミンDはどれだけ摂ればいい?
1日あたりのビタミンD摂取量は、日本人の食事摂取基準を参考にします。日本人の食事摂取基準は、健康増進法(平成14年法律第103号)第16条の2の規定に基づき、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を、厚生労働大臣が定めたものです。
ビタミンDの摂取目安量を記載しましたので、参考にしてみてください。
性別 | 男性 | 女性 | ||
年齢等 | 目安量 | 耐容
上限量 |
目安量 | 耐容
上限量 |
0~5(月) | 5.0 | 25 | 5.0 | 25 |
6~11(月) | 5.0 | 25 | 5.0 | 25 |
1~2(歳) | 3.0 | 20 | 3.5 | 20 |
3~5(歳) | 3.5 | 30 | 4.0 | 30 |
6~7(歳) | 4.5 | 30 | 5.0 | 30 |
8~9(歳) | 5.0 | 40 | 6.0 | 40 |
10~11(歳) | 6.5 | 60 | 8.0 | 60 |
12~14(歳) | 8.0 | 80 | 9.5 | 80 |
15~17(歳) | 9.0 | 90 | 8.5 | 90 |
18~29(歳) | 8.5 | 100 | 8.5 | 100 |
30~49(歳) | 8.5 | 100 | 8.5 | 100 |
50~64(歳) | 8.5 | 100 | 8.5 | 100 |
65~74(歳) | 8.5 | 100 | 8.5 | 100 |
75以上(歳) | 8.5 | 100 | 8.5 | 100 |
妊婦 | 8.5 | ― | ||
授乳婦 | 8.5 | ― |
摂取のめやすとして、ビタミンD2とビタミンD3を区別せずビタミンDとして両者の合計量で算出しています。
また、1歳までの乳児では、くる病防止の観点からやや多めの5μgに設定されています。
摂取の基準値がわかったところで、実際に各々の生活に置き換えて考えていくと、たとえば、35歳男性であれば、1日におよそ8.5μgのビタミンDを摂ることを目標にします。1日3食のうち、1食に鯖1切れを食べると過程した際に、鯖1切れ80gで、およそ9μgのビタミンDが摂れます。(調理方法にもよりますが)ここでは、1日の基準値を満たすことを考えますので、鯖1切れで十分な量を摂れていると言えるでしょう。
ビタミンDの効果的な摂り方
ビタミンDは脂溶性のビタミンです。油に溶けやすく、水には溶けないという性質があります。そのため、食べ物からビタミンDを摂る際には、ビタミンDを含む食材と一緒に、油を同時に摂取すると体への吸収が良くなります。
具体的には、油で炒める、バターでソテーする等、調理の際に油を使うことで吸収率がアップするのです。
紫外線を浴びると体内でビタミンDが作られる
実は、人間の皮下脂肪にはプロビタミンDが存在しており、太陽の紫外線を浴びることで、ビタミンDを合成することができます。
天候や日照時間、紫外線の体への害などの問題から、ビタミンDが不足しがちであることもあり、厚生労働省は上述したビタミンDの食品からの摂取基準値を設けているものと考えます。
また、紫外線に当たる際に、日焼け止めを塗ってしまうとビタミンDは生成されません。屋内で窓越しに日光を浴びるのも、あまり効果はありません。
毎日でなくとも、週に何回か5~30分ほど外に出て日光浴するといいでしょう。
日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、フレイル予防を図る者はもとより、全年齢区分を通じて、日常生活において可能な範囲内での適度な日光浴を心がけるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である。
出典:日本人の食事摂取基準(2020年版)
プロビタミンとは体内に摂取したあとや、紫外線照射などによりビタミンと同じ働きをする物質。食品中にも数多くのプロビタミンが存在している。
まとめ
骨や歯を丈夫にするビタミンD。世界ではがん予防のビタミンとしても話題になっています。
ビタミンDは青背の魚や乾物に多く含まれます。中でも含有量トップは白キクラゲです。聞きなれない方も多いかと思いますが、中国料理の中華くらげに使われているアレです。薬膳料理などにも使われますね。
反対に、なじみのある黒い色の黒キクラゲはというと、ビタミンDの含有が白キクラゲの半分以下になりますので(同じ容量で比べた場合)、覚えておくと良いかもしれません。
また、食べ物からビタミンDを摂る以外にも、日光浴をすることで人の体の中でビタミンDは作られます。昔に比べ、外で遊ぶ機会が少なくなった子ども達、子どもの頃から日焼け止めを塗って肌を保護しすぎてしまうことも、ビタミンD不足の要因と言えます。
大人も不足しがちなビタミンD、美味しく摂って健康を維持しましょう。
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