妊娠初期のビタミンAの摂りすぎが赤ちゃんに影響を及ぼす

ビタミン

ビタミンAは、人の体内で合成できない脂溶性のビタミンです。そのため食事での摂取が必須となるのですが、特に、妊娠中の女性は、胎児の発達に必要不可欠な栄養素でもありますので、母体から赤ちゃんに送られる量を考慮し、少し多めに(摂取基準量は後述します)摂取します。ただし、ビタミンAの過剰摂取は胎児に奇形を及ぼす可能性がありますので、注意が必要です。

ビタミンAの過剰摂取が赤ちゃんの奇形を招く?

厚生労働省は、1997年に「妊娠3ヶ月以内または、妊娠を希望する女性」において、以下の2つの留意事項を初めて発表しました。

ビタミンAの豊富な食品の連続摂取は避ける

ビタミンA補強材(サプリメント)や健康食品を摂取する際は含有量を確認する

つまりは、必要以上に摂らないことを意味しています。催奇形性を有するとはっきり名言しています。(下記参照)
妊娠初期の女性がビタミンAを過剰に摂取すると、お腹の中の赤ちゃんが先天奇形(内蔵疾患や心奇形、その他奇形)になる可能性があるので、妊娠中、妊活中の女性にはこのことを心に留めておいていただきたいです。

ビタミンAと奇形発現等の関係において、妊娠前3ヶ月から妊娠初期3ヶ月までに、ビタミンA補給剤を10,000IU/day以上継続摂取した女性から出生した児に、奇形発現率の増加が認められると推定された疫学的知見が薬学誌に報告されたこと等に鑑み、今後、ビタミンAを含有する健康食品にあっては1粒中の含有量を考慮しながら、過剰摂取されることのないよう必要な表示を行うなど、関係営業者に対する指導を行うこと。

参考:厚生労働省 妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性におけるビタミンA摂取の留意点等についてhttps://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/dl/4b-1.pdf

妊婦のビタミンAの安全な摂取目安量

妊娠初期、中期は必要以上に摂らない通常の食事で結構です。

ただし、妊娠中はへその緒を通じて赤ちゃんに栄養を送る必要がありますから、

必要以上に摂らない、と言いながらも妊娠後期には非妊娠時よりも多めにビタミンAを摂ります。以下の表を参考にしてみましょう。

1日あたりのビタミンA摂取量(μgRAE/日)
性 別 男 性 女 性
年齢等 推定平均必要量2 推奨量2 目安量3 耐容上限量3 推定平均必要量2 推奨量2 目安量3 耐容上限量3
0~5(月) 300 600 300 600
6~11(月) 400 600 400 600
1~2(歳) 300 400 600 250 350 600
3~5(歳) 350 500 700 300 400 700
6~7(歳) 300 450 900 300 400 900
8~9(歳) 350 500 1,200 350 500 1,200
1011(歳) 450 600 1,500 400 600 1,500
1214(歳) 550 800 2,100 500 700 2,100
1517(歳) 650 900 2,600 500 650 2,600
1829(歳) 600 850 2,700 450 650 2,700
3049(歳) 650 900 2,700 500 700 2,700
5069(歳) 600 850 2,700 500 700 2,700
70以上(歳) 550 800 2,700 450 650 2,700
妊婦(付加量)
初期 +0 +0
中期 +0 +0
   後期 +60 +80
授乳婦(付加量) +300 +450

参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準

妊娠後期に18~29歳の方でしたら+80μgで730μg、30~49歳の方でしたら+80μgで780μgの摂取を目標にしてみましょう。

妊娠初期の過剰摂取は厳禁です。過剰摂取といっても、通常の食事で摂り過ぎになることはまずありません。注意していただきたいのは、サプリメントの場合です。妊娠中に赤ちゃんに良いからと、葉酸やマルチビタミンなどのサプリを摂られている方、思わぬかたちで摂り過ぎになる危険がありますので表示成分量、含有量を良く読んで正しく使いましょう。

ビタミンAを多く含む食品

ビタミンAは化学名をレチノールと言います。ここではレチノールの含有量の多い食べ物を紹介します。

食品名 目安量 レチノール含有量μg
鶏レバー 1個 5600
豚レバー 100g 2800
レバーペースト 50g 2150
うなぎの蒲焼 1串 1500
あん肝 30g 2490
ぎんだら 1切れ(80g) 880
かぼちゃ 100g 330
ほうれん草 70g 315
人参 1/3本 182

参考:食品成分表 新訂版

ビタミンAは鶏レバーや豚レバー、うなぎの蒲焼など、動物性の食品に多く含まれます。

ビタミンAは水に溶けにくい性質をもつ脂溶性のビタミンです。過剰に摂取した分はからだの外に排出されにくく、脂肪組織や肝臓にに溜まってしまいます。ですが安心してください。にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に含まれるβーカロテンは、体の中でビタミンAに変化します。野菜のような植物性のものからβーカロテンとして摂取する分には、多く摂った分は体外へ排出されますので、摂りすぎになる心配はありません。

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ビタミンAの過剰症

ビタミンAの過剰症は、ビタミンAを含有する薬剤やサプリメントを大量に摂取したり、レバーなどのビタミンAを多く含む食品を連続摂取することで起こります。

頭痛、悪心、嘔吐、めまいなどの急性の症状のほか、慢性の場合には、関節痛、骨の痛み、皮膚乾燥、脱毛、食欲不振、体重減少、肝脾症、脳圧亢進による頭痛などが起こります。

参考:内閣府 食品安全委員会 https://www.fsc.go.jp/

ビタミンAの欠乏症

ビタミンAは欠乏すると暗い場所でものが見えにくくなる夜盲症を引き起こします。

また、ビタミンAは皮膚や粘膜を正常に維持する役割がありますので、欠乏すると目の乾燥を招く眼球乾燥症になることがあります。

ビタミンAは胎児の成長に必要不可欠な栄養素です。しかしながら、妊娠初期のビタミンAの摂りすぎは胎児の先天奇形を引き起こす可能性がありますので、注意が必要です。うなぎやレバーなどのビタミンAの豊富な動物性食品を何日も続けて食べること、ビタミンAのサプリメントを大量に服用すること、これらの行為は過剰摂取を招くことがあります。

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