油脂には常温で液体の植物油、常温で個体のバターやラード、大きく分けて2種類に分けられます。前者を不飽和脂肪酸、後者を飽和脂肪酸といったりもしますが、ここでは不飽和脂肪酸の一種であるオメガ3系列の脂肪酸について紹介します。
オメガ3脂肪酸とは
オメガ3(n-3)脂肪酸は人のからだの中ではつくることができない必須脂肪酸です。先程から脂肪酸、脂肪酸と聞きなれない言葉を使っていますが、先に書いたような油(植物性の常温で液体)や脂(動物性の常温で個体)をさまざまな種類に分類する際に、最近では「脂肪酸」という言葉を使って分けることが一般的になってきています。
脂肪酸は脂質を構成する主成分で、実にさまざまな種類があり、その脂肪酸の中の一つにオメガ3脂肪酸というものが存在するのです。
オメガ3脂肪酸の名前の由来
オメガ3脂肪酸は不飽和脂肪酸のうち、多価不飽和脂肪酸に分類されます。多価不飽和脂肪酸のメチル基末端の炭素から数えて、二重結合が何番目から始まっているかによってオメガ3(n-3)脂肪酸、オメガ6(n-6)脂肪酸、オメガ9(n-9)脂肪酸というように種類が分かれます。
例えば、オメガ3脂肪酸のうち青魚などにに含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)という物質は、血栓予防や中性脂肪の抑制に効果があると言われています。そしてそのEPAの化学式はC19H29COOHとなります。
さらにそのEPAの化学式を構造式で表すと、下記のようになります。
こちらを見ていただくとEPAは炭素数(C)20からなり、エイコサンにペンタの二重結合が5つ入っています。この二重結合(=となっているところが二重結合です)がメチル基(左端)から数えて3番目から始まっていますので、EPAはn-3、つまりオメガ3脂肪酸ということになるのです。
このように、脂肪酸にはそれぞれの構造によっていくつかの種類に分けられます。二重結合が3番目からスタートしているからオメガ3、6番目から始まっていればオメガ6、というように、なんとなくお分かり頂けたところで、オメガ3酸脂肪酸についてさらに詳しく見ていきましょう。
オメガ3脂肪酸のはたらき7つ
それでは、摂るとからだにいいと言われているオメガ3脂肪酸ですが、そもそも具体的に言うとなんなのでしょうか。
亜麻仁油などに含まれるα-リノレン酸や、前述した青魚などに含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)などを称してオメガ3脂肪酸と呼んでいます。
脂質の摂り過ぎは、エネルギー過多になりやすく、肥満や生活習慣病を引き起こす原因ともいわれています。
特に、牛脂やバター、ラードなど常温で個体の油脂は、体脂肪として体に蓄積しやすく、スナック菓子や大豆油、ごま油に含まれるリノール酸の摂り過ぎは、心疾患やガンのリスクを高めるという報告もあります。
言うまでもなく、脂質の摂取は多すぎても少なすぎても良くありません。
ここで紹介するオメガ3脂肪酸のような、体に良い脂質を選んで摂ることが大切です。それではオメガ脂肪酸が体にどのように良いのか見ていきましょう。
1.血液中の中性脂肪を減少
オメガ3脂肪酸に含まれるα-リノレン酸には、血中の悪玉コレステロールを減らす働きがあります。中性脂肪が減ることで、動脈硬化や心筋梗塞の予防にも良いと言われています。また、体に良い善玉コレステロールは減ることなく、悪玉のみ減らすという点も嬉しいポイントです。
2.動脈効果・高血圧の予防
α-リノレン酸には血管をしなやかにして血液をさらさらにする効果があります。血行を促すとともに、前述した血液中の脂質を減らすことで動脈硬化、高血圧の予防にも期待ができます。
3.脂質異常症の予防
脂質異常症とは、LDLコレステロールが140mg/dl以上、またはトリグリセリドが150mg/dl以上、あるいはHDLコレステロールが40mg/dl未満の状態を言います。
脂質異常症をそのままにしておくと動脈硬化や脳・心臓疾患を引き起こす恐れがあり、早期発見・予防が重要です。
また、脂質異常症は脂質コントロールによって予防ができると言われており、α-リノレン酸を含む植物油や魚介油を摂ることが良いと言われています。
4.メタボリックシンドロームの予防
メタボの略称で知られるメタボリックシンドロームは、外見を見ただけでは診断がむずかしく、主に内臓脂肪型肥満の人を言い、ただ単に太っている皮下脂肪型の肥満の方はメタボとは言いません。
メタボは主に栄養過多と運動不足が原因で、内蔵に脂肪が蓄積されることで起こります。
また、内蔵脂肪型肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常の合併症を引き起こしやすいため注意が必要です。
そんなメタボの予防にα-リノレン酸が効果的と言われています。
5.集中力の向上・ストレス緩和
体内でα-リノレン酸に変化するDHA・EPAは青魚などに多く含まれ、摂取すると頭が良くなると一時話題になった油です。
特にDHAは脳の神経細胞を柔軟にし、集中力が向上すると言われています。さらには、ストレスや緊張を和らげ心身を安定させる働きがあることも分かっています。
6.アレルギーの抑制
α-リノレン酸にはアレルギー反応を抑える働きがあります。次の項目でα-リノレン酸を含む食べ物を紹介しますが、α-リノレン酸は特に「えごま油」という植物油に多く含まれており、その名の通りえごまの実から採れる油です。
そして、えごまに含まれる「ルテオリン」という成分もアレルギーを抑制する作用があります。
つまり、α-リノレン酸を含む食品のなかでも、特にえごま油はα-リノレン酸とルテオリンの相乗効果で、アレルギー反応の抑制に効果的と言えます。
7.更年期の症状を緩和
一般的に40代頃から始まる更年期の症状は、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌不足によって起こると言われています。
α-リノレン酸を多く含む油のひとつに「亜麻仁油」という植物油があり、この亜麻仁油に含まれる「リグナン」という成分には、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きがあります。
亜麻仁油を摂ることで不足しているエストロゲンを補い、更年期特有の症状いらいらやの緩和や、不妊にも効果が期待できます。
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オメガ3脂肪酸を含む食べ物
それでは最後に、オメガ3脂肪酸を含む食べ物をご紹介します。毎日の食事に上手にとり入れていきましょう。
青背の魚
青背の魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)はオメガ3系統です。
イワシやさば、さんま、まぐろなどに多く含まれます。
亜麻仁油
亜麻という植物の種子から採れる油です。独特の風味があり、少しの苦味やえぐみを感じる方も。原料の亜麻は1年草で、カナダや中国、インド、アメリカなど世界中で栽培されています。日本では北海道が主な産地です。
亜麻仁油の主な成分は、なんといってもα-リノレン酸です。それに加えて「リグナン」というポリフェノールの一種も多く含んでいます。
ちなみに、α-リノレン酸は体内でEPA・DHAに変化します。
また、亜麻仁油は、その酸化しやすい性質ゆえに、遮光のビンに入った状態で販売されていることがほとんどです。保存する際も熱や光を避けたほうがいいでしょう。冷蔵庫での保存をおすすめします。
熱に弱いため、調理油としての使用には不向きです。冷奴やヨーグルトにかけたり、スムージーに加えて飲んだり、できるだけ生のまま摂ることが大切です。
えごま油
韓国料理のサムギョプサルは、豚のバラ肉をえごまの葉に巻いて食べますが、そのえごまの種子から採れる油をえごま油といいます。えごまとは言え、ごまとは違ってシソ科の植物です。ごま油とも似て非なるものですので、間違わないようにしましょう。
えごま油の成分のおよそ6割がα-リノレン酸でできています。さらに、えごまに多く含まれている「ルテオリン」という成分は、抗酸化作用があり、アレルギーの症状を緩和するとも言われ注目されています。
使い方はお味噌汁に垂らしたり、ドレッシングにしたり。香りや味は、ほのかにえごまの風味がするだけですので、主となる料理の邪魔をしません。酸化しやすいため、熱と光は極力避けて冷蔵庫で保存しましょう。
インカインチオイル
インカインチとは聞きなれない方も多いかと思いますが、アマゾンの熱帯地域に生息しているツル性常緑樹をいいます。「サチャインチ」と呼ばれたりもしています。
特徴的な緑色の星型のさやの中にある種子から作られています。
また、インカインチオイルが作られるようになってから、わずか10年ほどですので、比較的新しい部類の油と言えます。
成分としては、インカインチオイルのおよそ50%がα-リノレン酸です。その他には抗酸化作用のあるビタミンEも豊富。植物油のなかでは、ビタミンE含有量がトップクラスなことも特徴です。
こちらも熱や光に弱いので冷蔵保存がおすすめ。オメガ3系統の油でありながら、加熱調理もできるので、炒め物などにも使っていただけます。
オメガ脂肪酸の1日あたりの摂取量
1日あたりのオメガ3脂肪酸摂取量は、日本人の食事摂取基準を参考にします。日本人の食事摂取基準は、健康増進法(平成14年法律第103号)第16条の2の規定に基づき、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を、厚生労働大臣が定めたものです。オメガ3脂肪酸の摂取目安量を記載しましたので、参考にしてみてください。
性別 | 男性 | 女性 |
年齢等 | 目安量 | 目安量 |
0~5(月) | 0.9 | 0.9 |
6~11(月) | 0.8 | 0.8 |
1~2(歳) | 0.7 | 0.8 |
3~5(歳) | 1.1 | 1.0 |
6~7(歳) | 1.5 | 1.3 |
8~9(歳) | 1.5 | 1.3 |
10~11(歳) | 1.6 | 1.6 |
12~14(歳) | 1.9 | 1.6 |
15~17(歳) | 2.1 | 1.6 |
18~29(歳) | 2.0 | 1.6 |
30~49(歳) | 2.0 | 1.6 |
50~64(歳) | 2.2 | 1.9 |
65~74(歳) | 2.2 | 2.0 |
75以上(歳) | 2.1 | 1.8 |
妊婦 | 1.6 | |
授乳婦 | 1.8 |
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