ビタミンB1は水溶性のビタミンです。甘いものや糖類を含む食べ物を好む、現代人に不足しがちな栄養素として知られています。ここでは、ビタミンB1の生理作用と多く含む食べ物について、またビタミンB1が不足するとどうなるのかについて、詳しく書いています。
ビタミンB1の生理作用
ビタミンB1の生理作用および、体の中でどのような働きをするのか、以下に詳しく見ていきます。
糖質をエネルギーに換える
糖質からエネルギーを産生するためには、ビタミンB1が必要不可欠です。
人の体内でビタミンB1(チアミン)はチアミンピロリン酸(TPP)となり、糖質からのエネルギー産生やペントースリン酸回路に酵素として関わっています。
糖質(甘いものや炭水化物)の摂取が多い人ほど、ビタミンB1の消費量が多くなります。
人の身体の神経機能を維持するためにもビタミンB1が必要です。
ビタミンB1の欠乏症
疲れやすい
ビタミンB1が不足すると、食事で摂取した糖質をうまくエネルギーに変換できないため、体内で乳酸や疲労物質がたまり疲れやすくなります。さらに食欲も減退し、倦怠感や夏バテのような症状があらわれます。
暑い夏、食欲が無いときには、そうめんや素うどんなど喉越しのよいものを食べたくなりますね。しかし、炭水化物(糖質)ばかりの食事では夏バテを助長するだけですので、ビタミンB1も同時に摂取することが大切です。糖質が分解されない状態が続くと、余った糖質は脂肪として蓄積されるので、肥満にも繋がります。
脚気(かっけ)
さらにビタミンB1が不足した状態が続くと、抹消神経障害をともなう手足のむくみやしびれ、脚気が起こります。
脚気の初期症状として食欲不信、続いて徐々に全身のだるさや倦怠感、特に下半身のしびれ、脚のむくみ、動機や息切れなどの全身症状が現れてきます。脚気かどうかの判断基準として、脚の脛(ひざのくぼみ)をハンマーなどで軽く叩くという検査があります。叩いた反射で、脚がピクっと跳ね上がらなければ脚気であるという診断ですが、見た目だけでは判断できない場合もありますので、不安な方、脚気の疑いがある方は医師の診断を仰いでください。
ウェルニッケ脳症
慢性的にビタミンB1不足が続くと、ウェルニッケ脳症という病気を発症します。
中枢神経障害であるウェルニッケ脳症は、眼球が細かく震えたり全く動かなくなる症状(眼球運動障害)や、小脳の働きが悪くなるため歩行がうまくできずにふらついたりする症状が出るのが特徴です。悪化すると意識障害から昏睡状態に陥ることも。精神障害を伴いうつ病を発症することもあります。
コルサコフ症
さらにビタミンB1不足が慢性化すると、ウェルニッケ脳症からコルサコフ症に移行します。
コルサコフ症とは、見当識障害を伴う病気で、発症時もしくはある期間から過去の記憶がなくなってしまう症状が特徴です。その間の記憶を思い出すことが困難で、くわえて新しい出来事を覚えることもできなくなってしまいます。
ビタミンB1を多く含む食べ物
食べ物 | 1食あたりの目安量 | ビタミンB1含有量(mg) |
うなぎ蒲焼 | 1串 | 0.75 |
豚肉(ロース脂身あり) | うす切り3枚 | 0.62 |
豚肉(ヒレ) | 2切れ | 0.59 |
豚肉(もも脂身あり) | 50g | 0.45 |
たらこ | 1/2腹 | 0.32 |
豆腐 | 1/2丁 | 0.15 |
焼豚 | 2枚 | 0.34 |
卵(全卵ゆで) | 1個(40g) | 0.16 |
玄米 | 100g | 0.41 |
胚芽精米 | 160g | 0.13 |
夏バテにうなぎが良いとされているのは、単に精がつくからという理由だけではなく、糖質からエネルギーを作り出すビタミンB1が多く含まれているからなんだね。
前述したように、ビタミンB1が不足し糖質のエネルギー産生が滞ってしまうと、疲労感や倦怠感を感じるようになりますので、心当たりのある方は上記のような食品を参考に、意識して摂ってみましょう。
玄米とは、もみからもみ殻をのぞいたものを言います。精米したものよりもタンパク質、脂質、ミネラル、食物繊維が多く含まれます。繊維質が多いので、体への吸収率は低くなります。
胚芽精米とは、特殊な精米方法によって胚芽の残存率を80%以上残したお米のこと。ビタミンB1、Eの含有量が高いのが特徴です。精白米に近い味をしているので、玄米や発芽玄米が固くて苦手という方にも食べやすくなっています。
ビタミンB1の摂取基準量
1日にどれだけの量のビタミンB1を摂ればよいのか、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」をもとに見ていきます。日本人の食事摂取基準は、健康の保持・増進、生活習慣病の発症の予防、重症化予防を視野にいれて厚生労働大臣が定めたものです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 |
0~5(月) | ― | ― | 0.1 | ― | ― | 0.1 |
6~11(月) | ― | ― | 0.2 | ― | ― | 0.2 |
1~2(歳) | 0.4 | 0.5 | ― | 0.4 | 0.5 | ― |
3~5(歳) | 0.6 | 0.7 | ― | 0.6 | 0.7 | ― |
6~7(歳) | 0.7 | 0.8 | ― | 0.7 | 0.8 | ― |
8~9(歳) | 0.8 | 1.0 | ― | 0.8 | 0.9 | ― |
10~11(歳) | 1.0 | 1.2 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
12~14(歳) | 1.2 | 1.4 | ― | 1.1 | 1.3 | ― |
15~17(歳) | 1.3 | 1.5 | ― | 1.0 | 1.2 | ― |
18~29(歳) | 1.2 | 1.4 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
30~49(歳) | 1.2 | 1.4 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
50~64(歳) | 1.1 | 1.3 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
65~74(歳) | 1.1 | 1.3 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
75以上(歳) | 1.0 | 1.2 | ― | 0.8 | 0.9 | ― |
妊婦(付加量) | +0.2 | +0.2 | ― | |||
授乳婦(付加量) | +0.2 | +0.2 | ― |
1チアミン塩化物塩酸塩(分子量=337.3)の重量として示した。
2身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミンB1の欠乏症である脚気を予防するに足る最小必要量からではなく、尿中にビタミンB1の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。
30~49歳の女性のビタミンB1摂取推奨量は、1日あたり1.1mg。だいたいうなぎの蒲焼1串と焼豚薄切り2枚で1.09mgのビタミンB1が摂取できます。
摂取推奨量はあくまでもおすすめしている量ですので、絶対的にこの量を摂らなければダメ!ということではありません。毎日の献立を考えるのは大変ですし、うなぎを毎日食べるのはあまり現実的とは言えません。1週間、2週間単位くらいで考え、上記のようなB1を多く含む食材を意識して取り入れましょう。
なんでも、同じ食材ばかりをずっと食べ続けるのはかえって健康を害してしまいますが、意識するのとしないとでは格段に違ってきます。
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豚肉とネギは食べ合わせ最高
豚肉に多く含まれるビタミンB1(チアミン)は、ネギ類やにんにくに含まれる臭気成分アリシンと体内で結合し、アリチアミンになります。このアリチアミンという化合物はチアミンよりも体内への吸収率が良く、効果的にビタミンB1を摂取することができるのです。
豚肉とネギは食材としての相性がいいので、ダイレクトに炒め物にしたり、豚肉の生姜焼きにネギを散らしたりしてもいいですね。豚汁に青ネギをプラスしたりも◎
お酒がお好きな方も
お酒を飲む機会が多い方もビタミンB1が不足しがちです。アルコールを分解する際にはビタミンB1を消費します。大量のアルコールは多くのビタミンB1が必要となりますので、お酒を飲む際は、おつまみや食事と一緒に飲みましょう。豆類はビタミンB1が豊富ですので、枝豆や冷奴などが◎
しかしながら、お酒を飲むとビタミンB1の体内への吸収が悪くなることも分かっていますので、適量を超えて飲むのはほどほどにしておいたほうがいいですね。
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