私たちはお腹がすいたら食事を摂ります。空腹を満たすため、生きていくために必要なエネルギーを補うために食べ物を食べますが、とりわけご飯やパン、甘いものなどといった糖質の摂取比率が年々低下傾向にあるといわれています。また、糖質不足で筋肉が減少する、というと不思議に思われるかもしれませんが、なぜそのようなことが起こるのか、その原因とメカニズムについて詳しく紹介します。
糖質の栄養
糖質の代表的な食品といえば、ご飯、パン、麺、いも類、砂糖などです。三大栄養素のうち炭水化物を糖質と言ったりもしますが(あとの二つはたんぱく質・脂質)、炭水化物は厳密には糖質と食物繊維からできており、エネルギー源として重要な働きをするのが糖質。食物繊維は消化されないため、エネルギー源にはなりにくく、便通を良くするなどのまた違った働きがあります。
糖質はからだを動かすエネルギー
食べ物から摂取した糖質は、消化吸収され肝臓に送られます。栄養素としての糖質はグルコース(C6H12O6)といって、小腸で吸収されたのち血液に乗って全身へ運ばれエネルギー源として使われます。エネルギー源とは、からだを動かす、つまり歩いたり走ったりする際のエネルギー、また脳のエネルギー源としても利用されます。一部のグルコースは肝臓で貯蔵される際にグリコーゲンを合成します。
グリコーゲンとは、多数のグルコースがつながった多糖類の一種で、おもに肝臓や筋肉に多く含まれています。
糖質エネルギー比率
1日にどのくらいの量の糖質を摂取するのが望ましいのか、日本人の食事摂取基準を元に見ていきましょう。
以下の表を参考にすると、どの年齢においても糖質摂取目標量は、総エネルギー(kcal)の50~65%となります。
総エネルギーの算出については個人の体重・身長・BMIに基づいて身体活動レベル別に分けられますが、
おおむね30~49歳の男性では、1日あたり2300~3000kcal、
30~49歳の女性では1750~2300kcalとします。
2300kcalの50%のは1150kcal
お米であれば、1合(170g)で605kcalですので、およそ2合分(1310kcal)で一人あたりの1日の糖質(食品成分表より計算していますので、ここでは食物繊維を含む炭水化物)がまかなえるという計算になります。
2合のお米というと結構な量…だいたいの目安にしてみてくださいね。
性 別 | 男 性 | 女 性 | |
年齢等 | 目標量1,2(中央値3) | 目標量1,2(中央値3) | |
0~5(月) | ― | ― | |
6~11(月) | ― | ― | |
1~2(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
3~5(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
6~7(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
8~9(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
10~11(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
12~14(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
15~17(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
18~29(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
30~49(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
50~69(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
70以上(歳) | 50~65(57.5) | 50~65(57.5) | |
妊婦 | ― | ||
授乳婦 | ― | ||
1 範囲については、おおむねの値を示したものである。
2 アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。 3 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。 |
現代人はなぜ糖質の摂取が減っているのか
おおよその摂取目安量をお分かりいただけたかと思いますが、現代人の食事は昔ながらの和食から、欧米の肉類を中心とした食事に変化してきています。そのため、たんぱく質・脂肪の比率が増え、糖質が少なくなるといった現象が起こっていると考えられます。
また、糖質を制限する食事など、偏った情報からダイエットを行う人が増えていることも原因のひとつと考えます。
ダイエットを目的として食事を制限するのであれば、糖質を控えるというのはある程度理にかなっていますが、まったく食べないという状態になるとかえって健康を害してしまいます。
糖質不足の原因
食の欧米化
誤った知識によるダイエット
糖質制限ダイエットは筋肉が減少する
糖質が不足をすると、からだの中では体たんぱく質や体脂肪が分解され、糖質の代わりにエネルギーになります。さらに糖質が不足すると、大量の体たんぱく質が分解され筋肉を減少させます。これが、筋肉が減るというメカニズムです。
前項で、あまったグルコースはグリコーゲンとして肝臓に貯蔵されているとお伝えしました。食べ物から糖質を補給できないときには、その貯蔵しているグリコーゲンをつかってエネルギーを生み出すわけですが、いかんせん肝臓には50~60g程度のグリコーゲンしか蓄えられてないため、糖質以外のものからグルコースを作り出す必要があるのです。
その糖質以外のものというのが、アミノ酸(体たんぱく質)であったり脂肪であったりするのです。
糖質以外のものからグルコースを作り出す代謝を糖新生と言ったりもします。
ちなみに、脳は1日に100~125gのグルコースを必要とするので、到底肝臓に貯蔵されている分だけでは足りません!
糖質制限ダイエットでは、糖質を控えて体たんぱく質や脂肪からエネルギーを生み出すことを利用して、体脂肪を減少させます。そうは言っても、脂肪が減ると同時に筋肉量も減ってしまいますから、糖質ダイエットの際には筋肉量の低下を防ぐため高たんぱくの食事を摂ることを推奨しているのです。
また、長期にわたり体脂肪の分解が続くと、血液中のケトン体が増加しケトーシスを引き起こします。
糖質の過剰摂取は肥満を招く
しかしながら、必要以上のグルコースはトリアシルグルコースとして脂肪組織に蓄積されるため、糖質の過剰な摂取は肥満の原因にもなります。
過度のダイエットを控えること、そして糖質を摂り過ぎないこと、糖質のエネルギー比率(総エネルギーの50~65%)をできる範囲で維持することは、健康の維持増進に非常に大切です。
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