ビタミンB6は水溶性のビタミンで、特に妊娠期・授乳期の女性が不足しやすい栄養素です。また、唇の端が切れやすい方、口内炎を繰り返す方はビタミンB6が不足している可能性があります。ここでは、ビタミンB6の主な働きと欠乏症、多く含む食材について詳しく記載しています。
ビタミンB6の働き
ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンという3種類のリン酸エステル型があり、特にピリドキサールのリン酸エステルは、アミノ酸の代謝・合成に関わっています。
また、GABA(ギャバ)というγ(ガンマ)-アミノ酪酸を合成する補酵素としても働いています。
ビタミン類はビタミンB6に限らず、それ自身がエネルギーや体の主成分とはなりません。ですが、体内の代謝を円滑にするために、各ビタミンは人体に必ず必要な栄養素なのです。
GABAとは、人の身体の中(主に脳)でストレスを軽減させたり、気持ちを落ち着かせたりする抑制系の神経伝達物質。
補酵素とは、酵素が作用を発揮するときに、なくてはならない存在。主にビタミンB群から作られます。
ビタミンB6の欠乏症
ビタミンB6の欠乏で以下のようなことが生じます。
口内炎
口角炎
脂漏性皮膚炎
けいれん
ビタミン不足でなくても、極度の疲労や病気によって抵抗力が低下している時には、口内炎・口角炎を発症します。一般的な口内炎であれば一週間ほどで自然に治るものがありますが、ステロイド軟膏で治療したり、ビタミンB6を含むビタミン剤を医者から処方される場合もあります。
また、ビタミンB6は腸内細菌により合成されるので、比較的欠乏症は起こりにくいともいわれています。
しかしながら、妊娠中・授乳中の女性は赤ちゃんに栄養を送る必要があることから、たんぱく質を代謝する際にビタミンB6の消費量が増えますので、ビタミンB6を積極的に摂る必要があります。
欠乏すると口腔内の炎症を生じるビタミン
ビタミンB6以外にも、不足すると口内炎や口角炎を引き起こすビタミンがあります。
以下を参考にしてみてください。
ビタミンの種類 | 欠乏による口腔内の症状 | 食べ物 |
ビタミンB2 | 口唇炎、口角炎 | 肝臓、魚介 |
ビタミンB6 | 口内炎、口角炎 | 肉、魚介 |
ビタミンC | 口内炎、口内出血、歯肉出血 | 果実、野菜、イモ類 |
ナイアシン、パントテン酸 | 口角炎 | 肉、魚介、肝臓、大豆 |
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ビタミンB6を多く含む食べ物
ビタミンB6は魚や肝臓に多く含まれます。まいわしは生のものは秋にしか出回らないことが多いですが、缶詰めやみりん干しに加工されています。加工食品も上手に取り入れましょう。
食べ物 | 1食あたりの目安量 | 含有量(mg) |
鯖 | 1切れ(100g) | 0.51 |
さけ(白鮭) | 1切れ(80g) | 0.51 |
まいわし | 1尾(100g) | 0.44 |
まぐろ赤身 | 刺身5切れ(50g) | 0.42 |
牛レバー | 20g | 0.18 |
豚レバー | 1/8個(50g) | 0.29 |
鶏レバー | 1/2個(20g) | 0.13 |
にんにく | 1かけ(10g) | 0.15 |
そらまめ(乾) | 15粒(90g) | 0.37 |
大豆(乾) | 30粒(9g) | 0.05 |
ビタミンB6の食事摂取基準
日本人の食事摂取基準は5年に1度改定されています。2020年は改定の年であり、今年から使用する新たな基準、策定検討会の報告書が、厚生労働省のホームページで公表されました。
なお、日本人の食事摂取基準(2020年版)は3月に告示される予定です。当サイトでも公表され次第、随時新しい基準に差し替えさせていただきます。
【厚生労働省】日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会の報告書を公表
[st-kaiwa1]日本人の食事摂取基準(2020年版)に差し替えさせていただきました。[/st-kaiwa1](2022/2追記)
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容
上限量2 |
推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容
上限量2 |
0~5(月) | ― | ― | 0.2 | ― | ― | ― | 0.2 | ― |
6~11(月) | ― | ― | 0.3 | ― | ― | ― | 0.3 | ― |
1~2(歳) | 0.4 | 0.5 | ― | 10 | 0.4 | 0.5 | ― | 10 |
3~5(歳) | 0.5 | 0.6 | ― | 15 | 0.5 | 0.6 | ― | 15 |
6~7(歳) | 0.7 | 0.8 | ― | 20 | 0.6 | 0.7 | ― | 20 |
8~9(歳) | 0.8 | 0.9 | ― | 25 | 0.8 | 0.9 | ― | 25 |
10~11(歳) | 1.0 | 1.1 | ― | 30 | 1.0 | 1.1 | ― | 30 |
12~14(歳) | 1.2 | 1.4 | ― | 40 | 1.0 | 1.3 | ― | 40 |
15~17(歳) | 1.2 | 1.5 | ― | 50 | 1.0 | 1.3 | ― | 45 |
18~29(歳) | 1.1 | 1.4 | ― | 55 | 1.0 | 1.1 | ― | 45 |
30~49(歳) | 1.1 | 1.4 | ― | 60 | 1.0 | 1.1 | ― | 45 |
50~64(歳) | 1.1 | 1.4 | ― | 55 | 1.0 | 1.1 | ― | 45 |
65~74(歳) | 1.1 | 1.4 | ― | 50 | 1.0 | 1.1 | ― | 40 |
75以上(歳) | 1.1 | 1.4 | ― | 50 | 1.0 | 1.1 | ― | 40 |
妊婦(付加量) | +0.2 | +0.2 | ― | ― | ||||
授乳婦(付加量) | +0.3 | +0.3 | ― | ― |
1 たんぱく質の推奨量を用いて算定した(妊婦・授乳婦の付加量は除く)。
2 ピリドキシン(分子量=169.2)の重量として示した。
また、ビタミンB6の食事摂取基準について、厚生労働省は以下のようにまとめていますので、併せて記載しておきます。
- l指標設定の基本的な考え方
- いまだ明確なデータは得られていないが、神経障害の発症などのビタミンB6欠乏に起因する障害が観察された報告を基に、推定平均必要量を設定。
l推定平均必要量の策定方法
- 成人・高齢者・小児:血漿PLP濃度を30 nmol/Lに維持できる摂取量として算定。
- 妊婦の付加量:胎盤や胎児に必要な体たんぱく質の蓄積を考慮して、非妊娠時での推定平均必要量算定の参照値と妊娠期のたんぱく質の蓄積量を基に算定。
- 授乳婦の付加量:母乳中のビタミンB6濃度に泌乳量を乗じ、相対生体利用率を考慮して算定。
l目安量の策定方法
- 乳児:0~5か月児は、母乳中のビタミンB6濃度に基準哺乳量を乗じて算定し、6~11か月児は、0~5か月児の目安量と18~29歳の推定平均必要量からの外挿値の平均値を基に設定。
l耐容上限量の策定方法
- ピリドキシン大量摂取時に観察される感覚性ニューロパシーを指標として設定。
ビタミンB6の過剰症
ビタミンB6の過剰症では、以下のようなことが生じます。
知覚神経障害
シュウ酸腎臓結石発生の危険
ビタミンB6は水溶性のビタミンですので、一時的に過剰に摂取したとしても、多くは尿として排出されます。
気をつけて頂きたいのは、ビタミンB6をサプリメントとして長期間服用する場合です。
おおむね数ヶ月から一年以上の服用は、過剰症となるリスクがありますので、十分に留意してください。
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